音楽家 石田多朗 | Taro Ishida
那須別邸 回の空間に流れる音楽を提供してくださっているのは作曲家、音楽プロデューサーの石田多朗さんです。
那須の静かな森の中にある自宅兼スタジオで、制作活動をされている石田さんですが、2024年に真田広之さんプロデュースのドラマ「SHOGUN」のヒットとともに、
この作品の音楽アレンジャーとして参加した石田さんの名前が多くの人に知られることとなりました。

石田さんを初めて知ったのは、地元の幼稚園で子供たちに向けて雅楽のコンサートを開催したときでした。
このような活動をされている方が那須にいるのかと、驚いたのです。
その後、木の俣川のほとりで雅楽を演奏されているYoutubeを拝見し自然にすーっと溶け込む音楽にとても感動したのです。そして、石田さんに那須別邸 回のBGMをお願いしたいと、強く思ったのです。
那須別邸 回に初めてお越しいただいたときは、リニューアルオープン、少し前の工事の最中でした。
静かな空気を纏い、石田さんの奏でる音楽のようにすーっとした佇まいで現れた石田さんは穏やかに、音楽への熱意をお話くださいました。

「自然に間借りするように、森の中に宿を営んでいます」
那須の歴史は古くからありますが、明確に分かる資料が残っているのは近現代の歴史です。
1926年(大正15年、昭和元年)に、那須御用邸が作られたことで、今日まで、手つかずの自然が豊かに残っているのですが、この自然は、さらに悠久の昔よりここにあるのです。
那須連山の主峰、茶臼岳の記録に残る一番古い噴火は1408年の室町時代のことです。その後、何度か噴火を繰り返した茶臼岳によって、この地は作られました。
温泉の歴史はさらに古く、遣唐使が初めて唐に送られた630年の飛鳥時代に、鹿の湯が発見され、開湯されたと残っています。
2023年のリニューアルの際に、レストラン棟を新築しました。
そのために森の一部を拓き、木の伐採が生じることになり、環境に対して「最小限の負荷」で建てられるよう、かなり長い時間をかけて悩み、今の形になりました。
遥か昔からある豊かな自然の中に、私たちはほんの短い間、宿を営んでいるにすぎず、自然への心からの感謝と畏怖の念を抱いているのです。
その想いが石田さんに伝わったのでしょうか。楽曲を提供を快諾してくださいました。

現在、館内では、時間帯によって異なる石田多朗さんの楽曲をBGMとして流しています。
朝食からチェックアウトまではピアノの楽曲、チェックインから夕食前までは雅楽で使われる「笙」で演奏されている楽曲、夕食時間から夜にかけては「楽琵琶」で奏でられる楽曲です。
外と内の繋がりを、自然と人との関わりを石田さんの音楽を通じて、那須別邸 回の空間で感じてもらえることを願います。

石田さんの最近の活動は、2025年8月23日、新作のアルバム『常世』をリリースされました。
石田さんのYoutubeで全曲聴くことができます。
石田さんからのメールに、このように書かれていました。
構想から制作まで2年ほどかかりましたが、この度ようやく完成にこぎつけました。雅楽の新しい機軸を生み出すのが大変でしたが、ようやくオリジナルティがある作品を作り出せたと思っております。「雅楽と西洋音楽の融合」という、これまであるようでなかった(難しすぎるんです)ものをかなりの完成度で仕上げることに成功いたしました。
世界的に、とても有名になった石田さんは那須の自然の音に溢れている森の中で、これまでと変わらず、楽曲制作を続けています。
石田多朗(いしだ たろう)
作曲家、音楽プロデューサー
ボストン生まれ。幼少期をサンフランシスコで過ごす。 23歳から音楽を学び始め、翌年、東京藝術大学音楽学部に合格。 同大学院修了後、2014年に雅楽作曲に挑戦し、オリジナル楽曲「骨歌」が坂本龍一に評価される。
その後、那須に移住し、療養を経て音楽哲学を再構築し、創作を再開。 2022年、アカデミー賞作曲家でナイン・インチ・ネイルズのメンバーでもあるアッティカス・ロスらと共同制作を行い、ドラマ『SHOGUN』の総合アレンジャーを担当。 この作品の音楽は、エミー賞作曲賞・テーマ曲賞、グラミー賞などにノミネートされ、国際的な評価を受けた。
現在は、雅楽と現代音楽、西洋音楽を融合させた独自の表現で、作曲・演出・プロデュースなど多面的に活動中。国内外の文化イベントにも多数参加しており、海外での活動も本格的に始動中。